Archive for the ‘遺言’ Category
公正証書遺言をお勧めする理由
公正証書遺言が望まれる理由
現在法律で認められている遺言には、以下の3種類あります。
「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」です。
一般的に「自筆証書遺言」の利用が最も多いのではないかと思いますが、この中で最も確実な遺言は「公正証書遺言」といえます。
公正証書遺言とは、公証役場で作成する遺言のことで作成した遺言について、遺言者の他、証人2名が立会して署名捺印の上作成します。
公証人が、中立・公正な立場に立って、場合によっては法律的なアドバイスをしてくれますので、形式的に無効な遺言が作成することはまず考えられません。
折角自筆で遺言を作成しても、それが無効なものであれば、かえって相続人が混乱してしまうこともあります。
ここでは、最も確実性の高い「公正証書遺言」について説明をしていきます。
公正証書遺言の作成手順
①遺言の内容を考える
まずは、遺言を残そうとされる方ご自身でおおまかな遺言の内容を考えます。
例えば、ご自身の財産内容(預貯金、不動産、株など)を洗い出し、どの財産を誰に渡したいか、などです。
大体の内容が決まったら、遺言の原案を作成します。当事務所では、お客さまに遺言内容についてヒアリングさせて頂くことで、意向に沿った遺言案を一緒に作成していきます。
②公証人と遺言案について相談
遺言案が完成したら、公証人と相談しながら、適宜修正などを行って遺言書を完成させます。
③証人2名の立ち会いのもとで署名捺印する
遺言の本文が完成すると、いよいよ遺言に署名捺印をします。
当日は遺言者と証人2名が立会のもと、公証人が遺言を読み上げます。内容に間違いがなければ、遺言の原本に署名捺印します。
この原本には立ち会った証人2名も署名捺印を行うなど、厳格な手続きで進められます。
署名捺印が終了すると、公正証書遺言は完成します。
➃遺言の原本は公証役場で保管してもらう
公正証書遺言が完成すると、原本は公証役場で保管してもらいます。正本や謄本を貰うこともできますが、万一紛失しても原本は公証役場にあるますので、心配は不要です。
公正証書遺言のメリット
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確実性の高い方法で遺言書を作成・保管できる
公正証書遺言では、事前に公証人との確認も行われる為に、形式的に不備がある遺言などが作成されるリスクは極めて低いです。
また、公証人の面前で署名捺印を行う為に、自筆証書遺言でよくある「本当に本人が書いたのか」など疑われることもありません。
また、原本も公証役場で保管される為に、自筆証書遺言と異なり、紛失などのリスクもありません。
その他にも自筆証書遺言の争いごとでよくある「誰かが自分に都合の良いように遺言の内容を書き換えたり、破棄されてしまう」といった恐れもないでしょう。
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裁判所での検認手続きをしなくてよい
自筆証書遺言が残されている場合は、ご遺族が無断で遺言を開封することはできません。(開封してしまうと過料が請求されることもあります)
遺言を発見したら、封筒を開封する前に、まず家庭裁判所で手続きを行わなければいけません。この家庭裁判所での手続きのことを、「検認(けんにん)」といいます。
検認は、管轄の家庭裁判所で手続きが必要です。戸籍の収集や家庭裁判所への申請などで多くの時間がとられてしまうこともあるでしょう。
公正証書遺言の場合は、この家庭裁判所での検認手続きを省略することができます。
公正証書遺言のデメリット
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公正証書遺言には手数料がかかる
公正証書遺言を作成するためには、公証役場に手数料を支払わなければいけません。手数料の金額は、相続財産の価額によって異なりますが、数万円程度はかかることが大半です。
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公正証書遺言でも絶対はない
公正証書遺言は公証人が事前に確認を行う為に、形式的なミスが生じるおそれはありません。
また、公証人の面前で署名捺印をする為に、その際の意思確認はとれているはずですが、認知症の方でその状況によっては、日によって判断能力が異なってくることもあります。
一般的な会話ではその症状に気づかない可能性もあり、そういったケースで後に遺言作成時の判断能力を争うといったことも考えられます。
確実性の高い遺言といえますが、絶対ではないということです。
当事務所では、公正証書遺言について原案の作成から公証人とのやり取りまで、全てサポートさせて頂きます。
公正証書作成をご検討されている方は、気軽にご相談ください。
初回相談・費用見積は無料で承っております。
遺言作成に関するご相談でよくあるケース
遺言作成に関するご相談
当事務所にも、遺言作成についてのご相談をよく受けますが、ここでは遺言作成を思い立ったキッカケで多い事項や遺言作成をお勧めするケースについて説明していきます。
・相続人がいないため財産を寄付したい
相続人が誰もいない場合(親族がいない、親族はいるが全員が相続放棄している)は、その財産は最終的には国庫に帰属されます。遺言をのこすことにより、特定の慈善団体や公共団体に寄付することができます。
・子どもがいない
子どもがいない夫婦においては、配偶者に全財産を相続させたい、あるいは住んでいる家は配偶者にそのまま継続して住んでほしいと考えることも多いでしょう。子どもがいない場合の法定相続人は亡くなられた方の親がまだ生きている場合はその親と配偶者、既に親も亡くなられている場合は亡くなられた方の兄弟姉妹と配偶者が相続人となります。
特に兄弟姉妹と配偶者が相続人のケースでは、お互いが疎遠であったり意思疎通が上手くいかないことで、紛争になってしまうケースが多いのではないでしょうか。
兄弟姉妹には遺留分がありませんので、配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合は、遺言(全財産を妻に相続させる)をのこしておくことによって配偶者にすべて相続させることができます。
・相続人以外のお世話になった人に財産を渡したい
遺言がない場合、特定のケースを除いて相続人以外の人には財産は渡りません。
子や兄弟姉妹などの相続人は生きているが、財産をそれ以外の人にのこしたいのであれば遺言をのこしておく必要があります。
・帰化したことを子どもに知られたくない
通常相続が発生した場合には、金融機関などの手続きで亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍謄本等が必要となってきます。
帰化した方については、帰化してからの戸籍謄本は取得できますが、帰化する前の戸籍については日本の役所で取得することはできません。
自身が生まれた国の大使館などで書類を集めなければならず、その過程で子どもに知られてしまうこともあるでしょう。
両親の氏名が日本名になっているかなどの諸条件はあるものの、遺言を残しておくことで、戸籍の取得も軽減されることとなり、結果相続人の労力も少なくなることでしょう。
・相続人のうちの誰かに、他の相続人より多く遺産をのこしたい
遺言がないと、原則各相続人の取り分は法定相続割合で決まってしまいます。
最期まで看病をしてくれた相続人、将来的にお金が必要になるであろう相続人がいる場合など、特定の相続人に多く財産をのこしたいのであれば、遺言を残しておくことでご自身の意思に沿った財産の分け方をすることができます。
・自身が会社経営をしている
相続人が複数おり、特定の相続人に事業を引き継いでもらいたいケースなどでは、遺言でその旨を指定することができます。
遺言がないと相続人が事業や株式が分割されてしまい、後々の紛争の種となる可能性もあります。
・先妻との間に子がいる、養子がいる
このようなケースでは、相続人同士で全く面識がないことも多く、話し合い自体にも進まなかったり、争いになるケースも多くでてきます。
遺言を残しておくことで、争いのリスクを下げることができます。
・相続人同士の仲が悪い、相続人が多数いる、相続財産が多い
相続人間の仲が悪い、相続人が多数いる場合には、話し合いをすること自体難しく、またそれをまとめることも非常に大変な作業となってきます。
遺言を残しておくことで、争いのリスクを下げることができます。
・内縁の夫婦がいる
内縁の夫・妻は、内縁の相手方の法定相続人ではありません。例えば、亡くなった内縁の夫に法定相続人がいる場合、遺言を残しておかないと内縁の妻は、内縁の夫の財産を貰うことができなくなります。
いずれのケースでも、遺留分に配慮した遺言を作成するなど注意が必要となることもあります。
遺言作成でお困りのことや、不安なことなどあれば当事務所にご相談ください。
帰化したことを相続人に分かりづらくするには
帰化した後の戸籍の状態
帰化を検討されている方、既に帰化されている方など、帰化した後のご自身の戸籍の状態が気になることもあるでしょう。
中には子どもたちに元々外国籍だったことや帰化したことをお話されていないなど、ご事情によっては将来的に分かられたくないこともあると思います。
今回はこの点について、ご説明していきます。
帰化は戸籍から分かる
結論からいうと、帰化したことは戸籍に記載される為に、戸籍を遡っていけば帰化したことは分かってしまいます。
戸籍から帰化した旨を削除するような手続きもありません。
本籍地を変える(転籍)ことによって、帰化した旨が記載されている戸籍から新しく戸籍がつくられる為に、多少は分かりづらくなりますが、両親が帰化していなければ氏名の記載などから、いずれにしても分かってしまうこともあります。
両親が帰化して日本名になっていれば、更にご本人も転籍をすることで、遡って戸籍を追っていかない限り、帰化されたことは分かりづらくなるでしょう。
もし、上記のようなケース(両親が帰化しており、ご自身も転籍などしている)に当てはまるのであれば、帰化したことが相続人に分かりづらくする為に書類集めを簡略化した相続手続きをすることもできます。
帰化した後の相続手続き
日本に帰化された方が亡くなった場合には、通常の日本の相続手続きとなります。
よって、亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍謄本等が必要となります。
この場合、帰化した後の戸籍関係は日本で取得できますが、出生から帰化する前までの戸籍については日本にありません。
帰化前に国籍をおいていた国から取り寄せていかなければなりません。
例えば、韓国では家族関係証明書、基本証明書、婚姻関係証明書などで法定相続人を特定します。
アメリカでは、出生証明書・結婚証明書・死亡証明書などが必要となってきて、それらの書類により相続人を特定し、相続人全員で「私たちは被相続人の相続人であり、私たち以外に相続人はいません」という旨の宣誓供述書を作成し、 当該国の在日領事館や公証人の認証を受けます。
これらの書類を相続人が集めるのは、大変苦労しますし、費用や時間もかかってきます。
そこで当事務所では帰化された方については、相続手続きで残された相続人が困らないように公正証書遺言の作成をお勧めしております。
公正証書遺言のメリット
①自筆証書遺言や秘密証書遺言では、被相続人が亡くなった後に遅滞なく、家庭裁判所への遺言書の検認手続きが必要となりますが、公正証書遺言ではその手続きが不要です。
よって公正証書遺言は、検認手続きを経ることなくそのまま相続登記の添付書類として使用することができます。
公正証書遺言の原本は公証役場に保管されているため、正本または謄本を相続登記の申請書に添付することになります。
②相続登記の手続きについても、遺言執行者を定めておければ、その者と不動産を承継する方のみで申請することができ、他の相続人の関与は必要ありません。
③戸籍関係についても、出生から取り寄せる必要はなく、亡くなられ方については最後の戸籍(除籍)謄本のみで足ります。
以上のように公正証書遺言を残しておくことで、遺言書に偽造・紛失及び相続人同士の紛争が起きるリスクも減り、また相続手続きについても必要書類の簡素化や検認手続きが要らないなどの手間を省くこともでき、当事務所では、遺言を作成される際には公正証書遺言をお勧めしております。
相続人がいないと相続財産はどこに行くのか?
相続人なき財産は国庫に帰属されます
相続が発生し、相続人の捜索の公告の期間満了まで相続人が現れないなど、一定の手続きを経た後に、相続財産は国庫に帰属されます(民法第959条)。
こちらについては、年々国庫に帰属する相続財産は増加しているというニュースがリリースされていますので、下記もご参考にしてください。
「遺産の相続人がいないなどの理由で国庫に入る財産額が、2021年度は647億円と過去最高だったことがわかった。身寄りのない「おひとり様」の増加や不動産価格の上昇も背景に、行き場のない財産は10年前の倍近くに増えた。」
朝日新聞デジタルニュースより抜粋
https://www.asahi.com/articles/ASR1N4VWKR1HULFA00H.html(2023年1月23日)
相続人がいないケースとは
相続人がいないケースとは、子や孫、配偶者、父母、祖父母、兄弟姉妹等の法定相続人が被相続人の死亡時に誰も存在していないことを指します。
それに加えて、法定相続人はいるけれども、法定相続人全員が相続放棄をした場合も、相続人がいないことになります。
国庫に帰属させない方法とは
ご自身の意思で国庫に帰属させることは民法でも定められたものであり、悪いことではありませんが、もし誰か財産を渡したい方がおられるのであれば、そちらを実現させる方が望ましいでしょう。
国庫に帰属させずに、ご自身の意思を実現させる方法の一つとして「遺言」があります。
遺言で財産の残す方を指定することにより、相続財産は国庫に帰属することなく、その方(受遺者)に帰属させることができます。
当事務所でも時折相談を受けることがありますが、この意思表示は「遺言」として書面を残すことが重要であり、口約束ではできません。
また、遺言自体も要式が決まっており、それらを満たしてないと無効になる恐れもありますので、注意が必要です。
遺言の要式が整っていなかった、せっかく遺言を作成したのに誰にも発見されない、という事態がないよう遺言作成は専門家に相談することをお勧めします。
帰化した方が亡くなられると相続手続きはどうすればよいのか?
帰化した後の相続手続き
日本に帰化された方が亡くなった場合には、通常の日本の相続手続きとなります。
よって、亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍謄本等が必要となります。
この場合、帰化した後の戸籍関係は日本で取得できますが、出生から帰化する前までの戸籍については日本にありません。
帰化前に国籍をおいていた国から取り寄せていかなければなりません。
例えば、韓国では家族関係証明書、基本証明書、婚姻関係証明書などで法定相続人を特定します。
アメリカでは、出生証明書・結婚証明書・死亡証明書などが必要となってきて、それらの書類により相続人を特定し、相続人全員で「私たちは被相続人の相続人であり、私たち以外に相続人はいません」という旨の宣誓供述書を作成し、 当該国の在日領事館や公証人の認証を受けます。
これらの書類を相続人が集めるのは、大変苦労しますし、費用や時間もかかってきます。
そこで当事務所では帰化された方については、相続手続きで残された相続人が困らないように公正証書遺言の作成をお勧めしております。
公正証書遺言のメリット
①自筆証書遺言や秘密証書遺言では、被相続人が亡くなった後に遅滞なく、家庭裁判所への遺言書の検認手続きが必要となりますが、公正証書遺言ではその手続きが不要です。
よって公正証書遺言は、検認手続きを経ることなくそのまま相続登記の添付書類として使用することができます。
公正証書遺言の原本は公証役場に保管されているため、正本または謄本を相続登記の申請書に添付することになります。
②相続登記の手続きについても、遺言執行者を定めておければ、その者と不動産を承継する方のみで申請することができ、他の相続人の関与は必要ありません。
③戸籍関係についても、出生から取り寄せる必要はなく、亡くなられ方については最後の戸籍(除籍)謄本のみで足ります。
以上のように公正証書遺言を残しておくことで、遺言書に偽造・紛失及び相続人同士の紛争が起きるリスクも減り、また相続手続きについても必要書類の簡素化や検認手続きが要らないなどの手間を省くこともでき、当事務所では、遺言を作成される際には公正証書遺言をお勧めしております。
相続人なき財産、過去最高
本日(2023年1月23日)朝日新聞デジタルに以下のような記事が出てました。
「遺産の相続人がいないなどの理由で国庫に入る財産額が、2021年度は647億円と過去最高だったことがわかった。身寄りのない「おひとり様」の増加や不動産価格の上昇も背景に、行き場のない財産は10年前の倍近くに増えた。専門家は早めに遺言書をつくるよう勧めている。」
相続人がいないということは、法定相続人がいない状態や法定相続人全員が相続放棄をしたような状態をいいます。
このようなケースで更に遺言がない場合には、財産を相続する方が誰もいないことになりますので、財産は国庫に帰属されることとなります。
※国庫に帰属される手続きとは、利害関係者の申し立てにより、家庭裁判所に選任された「相続財産管理人」が選任され、未払いの税金や公共料金などを清算し、相続人が本当にいないかを確認します。一緒に暮らしたり身の回りの世話をしたりした「特別縁故者」がいれば家庭裁判所の判断などにもとづいて財産を分与し、残りは国庫に帰属するものです。
法定相続人がいないことがあらかじめ分かっている場合には、お世話になった方やどこかの団体に寄付するなど、
ご自身の財産の行き先について、遺言を作成しておくことをお勧めします。
子どもがいない夫婦の相続人とは?
子どものいない夫婦の相続人とは?
法定相続人とは民法で定められており、子のいない夫婦のうち夫が亡くなった場合、夫の相続人は次のとおりとなります。
- ①妻と夫の直系尊属(夫の両親など)
- ②妻と夫の兄弟姉妹(夫の直系尊属がいない場合)
子がいない夫婦が高齢になり、直系尊属(父母、祖父母等)が既に他界している場合は、夫の相続人は妻と(夫の)兄弟姉妹となります。
長年連れ添ってきたご夫婦で、配偶者が亡くなったときには、当然に財産全てをご自身が相続されると思われているケースもありますので、ご注意ください。
子どものいない夫婦に相続が発生すると
子がいない夫婦において、仮に夫が亡くなった場合、既に夫の両親が他界していて兄弟姉妹がいるときには、夫の財産は妻と(夫の)兄弟姉妹が相続します。
この場合、基本的には妻と(夫の)兄弟姉妹が遺産分割協議をし、誰がどれだけ相続するかを決定することになります。
妻として、夫と一緒に築いてきた財産の一部を(夫の)兄弟姉妹が相続することに納得いかない人もいるかもしれませんが、(夫の)兄弟姉妹にも相続権が認められています。
夫の兄弟姉妹といっても、長年疎遠であったり、連絡先も分からないこともあるでしょう。
そうした中で連絡を取り合って相続の話合いを進めていくことは大変です。
配偶者に相続させる遺言があると
夫が、残された妻に全て相続させる旨の遺言を残すことは勿論可能です。
この場合、夫の相続財産は全て妻が承継することになります。
兄弟姉妹には遺留分がありませんので、相続財産につき妻に全て相続させる旨の遺言があれば、妻が全て相続することができます。
ただし、今後の関係を踏まえて兄弟姉妹にもいくらか財産の残すような遺言を残しておくこともできますので、そのような時には内容もご検討ください。
この遺言については、夫が先に亡くなり妻が残されるケースで記載しておりますが、その逆の可能性(妻が亡くなり、夫と妻の兄弟姉妹が相続人)も勿論あり得ます。
こうした事態に備えて、ご夫婦共に同時に遺言を作成しておくことをお勧めします。
注意点としては、夫が全て妻に相続させる旨の遺言を残したときに、妻が夫より先に亡くなっている場合です。
この場合、その遺言の効力は生じず、夫の財産は(夫の)兄弟姉妹が相続することになります。
もし、夫が自分の兄弟姉妹に自分の財産を相続させたくないときは、全て妻に相続させるが、先に妻が亡くなっていた場合は●●に相続させるという遺言を残すこともできます。
誰がいつ亡くなるかは分かりませんので、このような形態の遺言を残すことも検討されるのも方法の一つです。
遺言作成でお困りのことがあれば、当事務所にご相談ください。
初回相談・費用見積は無料で承っております。
自筆証書遺言があるときの相続手続き
法定相続分と相続
亡くなれた方の相続財産については、民法で規定があり法定相続人がその権利義務を承継することとなります。
法定相続分や法定相続人の順位について民法で定められており、以下のようになります。
- 法定相続分
相続人が「どの割合」で相続分を持つのかは、以下のとおり法律で定められています。
第1順位相続人 |
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第2順位相続人 |
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第3順位相続人 |
配偶者は必ず相続人になり、相続人が配偶者しかいなければ、配偶者が全て相続します。また、相続人が第2順位や第3順位の相続人しかいなければ、その順位の方が相続します。同一順位に複数の相続人がいあれば、均等に相続分を分けることになります。例えば、相続人が配偶者、子2名の場合には、配偶者が2分の1、子2名が各々4分の1づつ相続することとなります。
- 法定相続人の順位
配偶者がいれば配偶者は必ず相続人となります。その他、配偶者とともに、子、両親、兄弟姉妹がその順位に応じて相続人となります。
第1順位相続人は、その時に存在していれば、必ず相続人となりますが、第2順位や第3順位の人は、自分より前の順位の相続人が全ていないときに初めて相続人となります。よって、被相続人に子がいれば、被相続人の両親や兄弟姉妹は相続人となりません。
通常の相続財産の分け方については、法定相続分を基に相続人同士で協議をして進めることが一般的です。
遺言があった場合の承継者の指定
しかしながら、亡くなられた方が遺言をのこしていたときはその遺言の内容が優先されるため、遺言の内容に従って相続財産が承継されます。
このような遺言があった際には、対象財産を相続すると指定された相続人へ相続手続きを進めていくこととなります。
自筆証書遺言のケース
遺言には主に自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類がありますが、自筆証書遺言は遺言者のみで作成できる為に、最も多く作成されているものです。
自筆証書遺言が見つかり、その内容により不動産を相続した相続人は、その自筆証書遺言を使って、自分名義へ相続登記をすることが可能ですが、以下のような注意点もあります。
自筆証書遺言の注意点
検認手続きが必要
自筆証書遺言は、そのままでは相続手続きや相続登記の添付書類として使用することができません。
自筆証書遺言を相続登記に使用するには、管轄の家庭裁判所へ遺言書の検認の申立てをして、自筆証書遺言に検認済証明書を付けてもらう必要があります。
検認手続きが完了しても、有効性は担保されない
家庭裁判所で遺言書の検認手続きが完了したとしても、その遺言が有効なものと判断されたわけではありません。
自筆証書遺言は遺言者のみで作成できる為に簡易に作成できますが、やはり成立要件があり、その要件を全て満たしていないと無効となってしまう可能性もあります。
亡くなられた方の自宅や貸金庫から遺言が見つかった際やその後の手続きについてお困りの方や不安な方がおられれば、当事務所に気軽にご相談ください。
初回相談・費用見積は無料で承っております。
子どもが小さいときこそ遺言が必要
遺言は何歳からできるのか
遺言というと、ご自身も高齢になってきたし、亡くなった後に残される家族や親族などの為に「終活」の一環として検討されるイメージが強いかもしれません。
しかし遺言の作成は何歳からできるかご存じでしょうか?
民法では以下のとおり定められています。
民法第961条; 15歳に達した者は、遺言をすることができる。 |
20歳に達してからだと思っていた方も多いと思いますが、遺言というのは遺言者の意思を尊重しようという制度ですので、遺言の意味を理解できるとされる年齢(15歳)になれば、遺言の作成することができると定められています。
しかしながら、現実は最初に述べたとおり定年退職後に遺言作成をされるケースが圧倒的です。
若いうちに遺言を残しても、ご自身が亡くならない限り遺言の効力は発生しませんので、遺言の作成など頭にも思い浮かばないでしょう。
しかしながら、ご自身も元気でも子どもがまだ小さいときこそ遺言が必要なケースもありますので、ご紹介します。
子どもが小さい内にご自身が亡くなったら
お子さんが生まれると、それを契機にマイホームを購入される方も多いと思います。
このように不動産を購入した後に、ご自身が不慮の事故や病気などで亡くなったらその不動産はどう相続されるのでしょうか。
相続人は妻と子どもになりますので、法定相続で分けると妻と子どもが2分の1づつ不動産を相続することとなります。
まだ子どもも小さいので、配偶者が私の単独名義にしようと考えるのが一般的ですが、配偶者の意思だけで単独名義にすることはできません。配偶者の単独名義にするには「遺産分割協議」が必要となってきますが、子どもが未成年のうちは遺産分割協議の当事者となることができないのです。
どうしても遺産分割協議を進めるのであれば、家庭裁判所で特別代理人の選任手続きなどをしなければなりません。
これが遺言がなかった場合の難点です。
配偶者と子どもの共有名義にしてしまうと、いざ不動産を売却しようにも、やはり子どもが未成年の内は家庭裁判所で特別代理人の選任手続きなどが必要です。
よって不動産の名義に未成年のお子さんが入っていると、その後の処分方法が複雑になってきてしまうのです。
こういった事態に陥らないためには、「妻に不動産を相続させる」旨の遺言を残しておくことで、妻単独の名義とすることができるのです。
遺言は遺言者の意思を実現させるための制度です。
ご自身のその時々の家族構成や資産状況にあった遺言を残しておくことで、万一の際に残された家族の安心にも繋がるといえるでしょう。
遺言作成についての相談や依頼は当事務所にお気軽にご相談ください。
初回相談・費用見積は無料で承っております。
遺言執行者を選任しておくべきか否か
遺言執行者を選任するメリット
遺言執行者とは、遺言の内容にそった手続きをする人のことをいいます。財産目録の作成から始まり、預貯金の解約手続きや不動産の名義変更手続きなど、遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をする権限を持ちます。
遺言執行者が定められていない遺言ももちろん有効であり、その場合には、相続人全員で協力して遺言の内容を実現していくことになります。
とはいえ、相続人が複数いる場合や相続人同士の関係が良好とはいえない場合には、作成する書類の収集や署名押印手続きなど全員の関与が必要となる為に、時間や労力もかかり、何かと頻雑になりがちです。
遺言執行者の指定があれば執行者が相続人の代表者として一人で手続きを進められるので手間が省けますし、時間の短縮にもなります。
その他遺言を残される方にとっても、「遺言をちゃんと発見してくれるのか」「遺言通りに相続人がちゃんと手続きをしてくれるのか」「相続人同士で揉めごとにならないだろうか」などの不安を払拭することもできます。
その点でも、遺言執行者を選任するメリットはあるといえるでしょう。
遺言執行者を選任するにあたって相続人の内の誰かを選任することも可能です。
相続人の中で適当な方がおられない場合や、ちゃんと執行できるか不安であれば、専門家に依頼することもできます。専門家に依頼する際には、遺言書を作成する際にあわせて相談するもの良いでしょう。
遺言執行者の権限
・遺言執行者の任務開始
(民法第1007条) 1 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。 2 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。 |
2018年の民法改正により、第2項が新設されました。今までは、遺言書の内容がある特定の相続人にとって不利益な内容だった場合でも、その相続人に遺言執行者になったことや遺言書の内容を伝えないまま手続き等が行われ、後にトラブルとなっているケースがあったことなどを踏まえ、明文化されることになりました。
・遺言執行者の立場
民法第1015条 遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる。 |
遺言執行者の任務は、相続人の代理人ではなく、遺言者の意思を実現するためにあるとされ、相続人の利益を害する遺言であっても遺言を実現することができると判断されています。
・遺言執行者の権利義務
民法第1012条 1 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。 2 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。 |
遺言執行者は、遺言の内容を実現するための強い権限を持っております。遺言執行者がある場合には、相続人は勝手に不動産を処分したり、遺言の執行を妨げる行為をすることはできません。
相続人が勝手にした処分行為は絶対的に無効であるとされていますが、処分の相手方が善意の第三者である場合には対抗問題となるので、注意も必要です。
遺言書の作成や遺言執行者の選任の有無についてお困りの方はお悩みの方は、当事務所にご相談ください。
初回相談・費用見積は無料で承っております。
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