Archive for the ‘遺言’ Category
遺言の作り直しや見直しをしたい
遺言の作り直し
一度遺言を作成していても、作成者がご存命の間は、何度でも作り直したり、内容を変更することができます。
但し新たに作り直す際にも、遺言の方式に則っていなければなりませんが、その方法は問われません。(例えば、自筆証書遺言を公正証書遺言で作り直すなど)
複数の遺言が存在し、ある遺言の内容が他の遺言の内容に抵触するような場合には、後の遺言で前の遺言を撤回したものをみなされ、後の遺言が有効となります。
それでは、一度作成した遺言を見直すべきタイミングとはいかなるものでしょうか。
遺言の見直しを検討するタイミング
-
家族構成の変化:
- 結婚:新たに配偶者が加わるため、遺言に配偶者の取り分を反映させる必要があります。
- 離婚:離婚により、元配偶者への遺産分配を見直す必要があります。
- 子供の誕生:新たに子供が生まれた場合、その子供の取り分を遺言に追加します。
- 相続人の死亡:相続人が亡くなった場合、遺産の分配方法を変更する必要があります。
-
財産状況の変化:
- 大きな資産の取得や売却:不動産の購入や売却、株式や貯蓄の大幅な増減があった場合。
- 事業の変動:会社の売却や新たな事業の開始など、事業資産の変動があった場合。
-
法律の変更:
- 相続税法や遺産分割に関する法律が変更された場合、遺言内容が法律に適合しているか確認する必要があります。
-
健康状態の変化:
- 自身の健康状態が大きく変わった場合(病気の診断や予期せぬ健康問題など)、遺言を見直して将来に備えることが重要です。
-
関係の変化:
- 相続人との関係が大きく変わった場合(和解、争いなど)、その関係を反映させるために遺言を見直すことが必要です。
-
定期的な確認:
- 特定のイベントがなくても、数年ごとに遺言を見直し、現状に即しているかを確認することが推奨されます。
遺言の見直し手順
①現状の確認:
- 現在の遺言内容を確認し、現状と一致しているかをチェックします。
②変更点の特定:
- 見直しが必要な項目や変更点をリストアップします。
③場合によっては、専門家への相談:
- 遺言作成の専門家に相談し、法的に問題がないかを確認します。
➃新しい遺言の作成:
- 必要に応じて新しい遺言を作成し、自筆証書遺言や公正証書遺言などの形で正式に残します。
遺言は故人の意思を実現させる為の最も有効な手段です。遺言の作成や、遺言の見直しを検討されるいる方でお困りのことがあれば、気軽にご相談ください。
初回相談・費用見積は無料で承っております。
遺言作成すべきかお悩みの方へ
遺言を作成すべきか否か
遺言作成に迷っている場合、いくつかのポイントを考慮することで、遺言を作成するかどうか、またどのように作成するかの判断に役立ちます。遺言作成に関するアドバイスと考慮すべきポイントを記載しますので、参考にして遺言作成するかどうかご検討ください。
遺言作成のメリット
-
遺産分割の明確化:
- 遺言によって遺産の分割方法を明確にすることで、相続人間のトラブルを未然に防ぐことができます。
-
特定の相続人への配慮:
- 特定の相続人に特別な配慮が必要な場合、遺言でその旨を指定できます。
(例:障がいのある子供や経済的に困窮している相続人に多くの財産を配分するなど)
-
遺言執行者の指定:
- 遺言によって遺言執行者を指定することで、遺産分割がスムーズに進むように手配できます。
-
寄付や社会貢献:
- 遺言によって財産の一部を慈善団体や社会貢献のために寄付することができます。
遺言作成時の注意点
-
法定相続分とのバランス:
- 法定相続分に反する内容の遺言を作成する場合、相続人が遺留分を請求する可能性があるため、これを考慮する必要があります。
-
明確な表現:
- 遺言内容は明確で曖昧な表現を避けるようにしましょう。法的に有効であるためには、具体的であることが重要です。
-
定期的な見直し:
- 状況が変わった場合(結婚、離婚、相続人の死亡など)、遺言の内容を見直すことが大切です。
まとめ
以上のように遺言作成についてポイントなどを簡単ではありますが列記しました。
その他に遺言作成には自筆証書遺言、公正証書遺言など書類も分かれており、法的な知識が必要になってくるケースもあります。
遺言作成でお困りであれば、一度気軽にご相談ください。
初回相談・費用見積は無料で承っております。
公正証書遺言をお勧めする理由
公正証書遺言が望まれる理由
現在法律で認められている遺言には、以下の3種類あります。
「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」です。
一般的に「自筆証書遺言」の利用が最も多いのではないかと思いますが、この中で最も確実な遺言は「公正証書遺言」といえます。
公正証書遺言とは、公証役場で作成する遺言のことで作成した遺言について、遺言者の他、証人2名が立会して署名捺印の上作成します。
公証人が、中立・公正な立場に立って、場合によっては法律的なアドバイスをしてくれますので、形式的に無効な遺言が作成することはまず考えられません。
折角自筆で遺言を作成しても、それが無効なものであれば、かえって相続人が混乱してしまうこともあります。
ここでは、最も確実性の高い「公正証書遺言」について説明をしていきます。
公正証書遺言の作成手順
①遺言の内容を考える
まずは、遺言を残そうとされる方ご自身でおおまかな遺言の内容を考えます。
例えば、ご自身の財産内容(預貯金、不動産、株など)を洗い出し、どの財産を誰に渡したいか、などです。
大体の内容が決まったら、遺言の原案を作成します。当事務所では、お客さまに遺言内容についてヒアリングさせて頂くことで、意向に沿った遺言案を一緒に作成していきます。
②公証人と遺言案について相談
遺言案が完成したら、公証人と相談しながら、適宜修正などを行って遺言書を完成させます。
③証人2名の立ち会いのもとで署名捺印する
遺言の本文が完成すると、いよいよ遺言に署名捺印をします。
当日は遺言者と証人2名が立会のもと、公証人が遺言を読み上げます。内容に間違いがなければ、遺言の原本に署名捺印します。
この原本には立ち会った証人2名も署名捺印を行うなど、厳格な手続きで進められます。
署名捺印が終了すると、公正証書遺言は完成します。
➃遺言の原本は公証役場で保管してもらう
公正証書遺言が完成すると、原本は公証役場で保管してもらいます。正本や謄本を貰うこともできますが、万一紛失しても原本は公証役場にあるますので、心配は不要です。
公正証書遺言のメリット
-
確実性の高い方法で遺言書を作成・保管できる
公正証書遺言では、事前に公証人との確認も行われる為に、形式的に不備がある遺言などが作成されるリスクは極めて低いです。
また、公証人の面前で署名捺印を行う為に、自筆証書遺言でよくある「本当に本人が書いたのか」など疑われることもありません。
また、原本も公証役場で保管される為に、自筆証書遺言と異なり、紛失などのリスクもありません。
その他にも自筆証書遺言の争いごとでよくある「誰かが自分に都合の良いように遺言の内容を書き換えたり、破棄されてしまう」といった恐れもないでしょう。
-
裁判所での検認手続きをしなくてよい
自筆証書遺言が残されている場合は、ご遺族が無断で遺言を開封することはできません。(開封してしまうと過料が請求されることもあります)
遺言を発見したら、封筒を開封する前に、まず家庭裁判所で手続きを行わなければいけません。この家庭裁判所での手続きのことを、「検認(けんにん)」といいます。
検認は、管轄の家庭裁判所で手続きが必要です。戸籍の収集や家庭裁判所への申請などで多くの時間がとられてしまうこともあるでしょう。
公正証書遺言の場合は、この家庭裁判所での検認手続きを省略することができます。
公正証書遺言のデメリット
-
公正証書遺言には手数料がかかる
公正証書遺言を作成するためには、公証役場に手数料を支払わなければいけません。手数料の金額は、相続財産の価額によって異なりますが、数万円程度はかかることが大半です。
-
公正証書遺言でも絶対はない
公正証書遺言は公証人が事前に確認を行う為に、形式的なミスが生じるおそれはありません。
また、公証人の面前で署名捺印をする為に、その際の意思確認はとれているはずですが、認知症の方でその状況によっては、日によって判断能力が異なってくることもあります。
一般的な会話ではその症状に気づかない可能性もあり、そういったケースで後に遺言作成時の判断能力を争うといったことも考えられます。
確実性の高い遺言といえますが、絶対ではないということです。
当事務所では、公正証書遺言について原案の作成から公証人とのやり取りまで、全てサポートさせて頂きます。
公正証書作成をご検討されている方は、気軽にご相談ください。
初回相談・費用見積は無料で承っております。
遺言作成に関するご相談でよくあるケース
遺言作成に関するご相談
当事務所にも、遺言作成についてのご相談をよく受けますが、ここでは遺言作成を思い立ったキッカケで多い事項や遺言作成をお勧めするケースについて説明していきます。
・相続人がいないため財産を寄付したい
相続人が誰もいない場合(親族がいない、親族はいるが全員が相続放棄している)は、その財産は最終的には国庫に帰属されます。遺言をのこすことにより、特定の慈善団体や公共団体に寄付することができます。
・子どもがいない
子どもがいない夫婦においては、配偶者に全財産を相続させたい、あるいは住んでいる家は配偶者にそのまま継続して住んでほしいと考えることも多いでしょう。子どもがいない場合の法定相続人は亡くなられた方の親がまだ生きている場合はその親と配偶者、既に親も亡くなられている場合は亡くなられた方の兄弟姉妹と配偶者が相続人となります。
特に兄弟姉妹と配偶者が相続人のケースでは、お互いが疎遠であったり意思疎通が上手くいかないことで、紛争になってしまうケースが多いのではないでしょうか。
兄弟姉妹には遺留分がありませんので、配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合は、遺言(全財産を妻に相続させる)をのこしておくことによって配偶者にすべて相続させることができます。
・相続人以外のお世話になった人に財産を渡したい
遺言がない場合、特定のケースを除いて相続人以外の人には財産は渡りません。
子や兄弟姉妹などの相続人は生きているが、財産をそれ以外の人にのこしたいのであれば遺言をのこしておく必要があります。
・帰化したことを子どもに知られたくない
通常相続が発生した場合には、金融機関などの手続きで亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍謄本等が必要となってきます。
帰化した方については、帰化してからの戸籍謄本は取得できますが、帰化する前の戸籍については日本の役所で取得することはできません。
自身が生まれた国の大使館などで書類を集めなければならず、その過程で子どもに知られてしまうこともあるでしょう。
両親の氏名が日本名になっているかなどの諸条件はあるものの、遺言を残しておくことで、戸籍の取得も軽減されることとなり、結果相続人の労力も少なくなることでしょう。
・相続人のうちの誰かに、他の相続人より多く遺産をのこしたい
遺言がないと、原則各相続人の取り分は法定相続割合で決まってしまいます。
最期まで看病をしてくれた相続人、将来的にお金が必要になるであろう相続人がいる場合など、特定の相続人に多く財産をのこしたいのであれば、遺言を残しておくことでご自身の意思に沿った財産の分け方をすることができます。
・自身が会社経営をしている
相続人が複数おり、特定の相続人に事業を引き継いでもらいたいケースなどでは、遺言でその旨を指定することができます。
遺言がないと相続人が事業や株式が分割されてしまい、後々の紛争の種となる可能性もあります。
・先妻との間に子がいる、養子がいる
このようなケースでは、相続人同士で全く面識がないことも多く、話し合い自体にも進まなかったり、争いになるケースも多くでてきます。
遺言を残しておくことで、争いのリスクを下げることができます。
・相続人同士の仲が悪い、相続人が多数いる、相続財産が多い
相続人間の仲が悪い、相続人が多数いる場合には、話し合いをすること自体難しく、またそれをまとめることも非常に大変な作業となってきます。
遺言を残しておくことで、争いのリスクを下げることができます。
・内縁の夫婦がいる
内縁の夫・妻は、内縁の相手方の法定相続人ではありません。例えば、亡くなった内縁の夫に法定相続人がいる場合、遺言を残しておかないと内縁の妻は、内縁の夫の財産を貰うことができなくなります。
いずれのケースでも、遺留分に配慮した遺言を作成するなど注意が必要となることもあります。
遺言作成でお困りのことや、不安なことなどあれば当事務所にご相談ください。
帰化したことを相続人に分かりづらくするには
帰化した後の戸籍の状態
帰化を検討されている方、既に帰化されている方など、帰化した後のご自身の戸籍の状態が気になることもあるでしょう。
中には子どもたちに元々外国籍だったことや帰化したことをお話されていないなど、ご事情によっては将来的に分かられたくないこともあると思います。
今回はこの点について、ご説明していきます。
帰化は戸籍から分かる
結論からいうと、帰化したことは戸籍に記載される為に、戸籍を遡っていけば帰化したことは分かってしまいます。
戸籍から帰化した旨を削除するような手続きもありません。
本籍地を変える(転籍)ことによって、帰化した旨が記載されている戸籍から新しく戸籍がつくられる為に、多少は分かりづらくなりますが、両親が帰化していなければ氏名の記載などから、いずれにしても分かってしまうこともあります。
両親が帰化して日本名になっていれば、更にご本人も転籍をすることで、遡って戸籍を追っていかない限り、帰化されたことは分かりづらくなるでしょう。
もし、上記のようなケース(両親が帰化しており、ご自身も転籍などしている)に当てはまるのであれば、帰化したことが相続人に分かりづらくする為に書類集めを簡略化した相続手続きをすることもできます。
帰化した後の相続手続き
日本に帰化された方が亡くなった場合には、通常の日本の相続手続きとなります。
よって、亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍謄本等が必要となります。
この場合、帰化した後の戸籍関係は日本で取得できますが、出生から帰化する前までの戸籍については日本にありません。
帰化前に国籍をおいていた国から取り寄せていかなければなりません。
例えば、韓国では家族関係証明書、基本証明書、婚姻関係証明書などで法定相続人を特定します。
アメリカでは、出生証明書・結婚証明書・死亡証明書などが必要となってきて、それらの書類により相続人を特定し、相続人全員で「私たちは被相続人の相続人であり、私たち以外に相続人はいません」という旨の宣誓供述書を作成し、 当該国の在日領事館や公証人の認証を受けます。
これらの書類を相続人が集めるのは、大変苦労しますし、費用や時間もかかってきます。
そこで当事務所では帰化された方については、相続手続きで残された相続人が困らないように公正証書遺言の作成をお勧めしております。
公正証書遺言のメリット
①自筆証書遺言や秘密証書遺言では、被相続人が亡くなった後に遅滞なく、家庭裁判所への遺言書の検認手続きが必要となりますが、公正証書遺言ではその手続きが不要です。
よって公正証書遺言は、検認手続きを経ることなくそのまま相続登記の添付書類として使用することができます。
公正証書遺言の原本は公証役場に保管されているため、正本または謄本を相続登記の申請書に添付することになります。
②相続登記の手続きについても、遺言執行者を定めておければ、その者と不動産を承継する方のみで申請することができ、他の相続人の関与は必要ありません。
③戸籍関係についても、出生から取り寄せる必要はなく、亡くなられ方については最後の戸籍(除籍)謄本のみで足ります。
以上のように公正証書遺言を残しておくことで、遺言書に偽造・紛失及び相続人同士の紛争が起きるリスクも減り、また相続手続きについても必要書類の簡素化や検認手続きが要らないなどの手間を省くこともでき、当事務所では、遺言を作成される際には公正証書遺言をお勧めしております。
相続人がいないと相続財産はどこに行くのか?
相続人なき財産は国庫に帰属されます
相続が発生し、相続人の捜索の公告の期間満了まで相続人が現れないなど、一定の手続きを経た後に、相続財産は国庫に帰属されます(民法第959条)。
こちらについては、年々国庫に帰属する相続財産は増加しているというニュースがリリースされていますので、下記もご参考にしてください。
「遺産の相続人がいないなどの理由で国庫に入る財産額が、2021年度は647億円と過去最高だったことがわかった。身寄りのない「おひとり様」の増加や不動産価格の上昇も背景に、行き場のない財産は10年前の倍近くに増えた。」
朝日新聞デジタルニュースより抜粋
https://www.asahi.com/articles/ASR1N4VWKR1HULFA00H.html(2023年1月23日)
相続人がいないケースとは
相続人がいないケースとは、子や孫、配偶者、父母、祖父母、兄弟姉妹等の法定相続人が被相続人の死亡時に誰も存在していないことを指します。
それに加えて、法定相続人はいるけれども、法定相続人全員が相続放棄をした場合も、相続人がいないことになります。
国庫に帰属させない方法とは
ご自身の意思で国庫に帰属させることは民法でも定められたものであり、悪いことではありませんが、もし誰か財産を渡したい方がおられるのであれば、そちらを実現させる方が望ましいでしょう。
国庫に帰属させずに、ご自身の意思を実現させる方法の一つとして「遺言」があります。
遺言で財産の残す方を指定することにより、相続財産は国庫に帰属することなく、その方(受遺者)に帰属させることができます。
当事務所でも時折相談を受けることがありますが、この意思表示は「遺言」として書面を残すことが重要であり、口約束ではできません。
また、遺言自体も要式が決まっており、それらを満たしてないと無効になる恐れもありますので、注意が必要です。
遺言の要式が整っていなかった、せっかく遺言を作成したのに誰にも発見されない、という事態がないよう遺言作成は専門家に相談することをお勧めします。
帰化した方が亡くなられると相続手続きはどうすればよいのか?
帰化した後の相続手続き
日本に帰化された方が亡くなった場合には、通常の日本の相続手続きとなります。
よって、亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍謄本等が必要となります。
この場合、帰化した後の戸籍関係は日本で取得できますが、出生から帰化する前までの戸籍については日本にありません。
帰化前に国籍をおいていた国から取り寄せていかなければなりません。
例えば、韓国では家族関係証明書、基本証明書、婚姻関係証明書などで法定相続人を特定します。
アメリカでは、出生証明書・結婚証明書・死亡証明書などが必要となってきて、それらの書類により相続人を特定し、相続人全員で「私たちは被相続人の相続人であり、私たち以外に相続人はいません」という旨の宣誓供述書を作成し、 当該国の在日領事館や公証人の認証を受けます。
これらの書類を相続人が集めるのは、大変苦労しますし、費用や時間もかかってきます。
そこで当事務所では帰化された方については、相続手続きで残された相続人が困らないように公正証書遺言の作成をお勧めしております。
公正証書遺言のメリット
①自筆証書遺言や秘密証書遺言では、被相続人が亡くなった後に遅滞なく、家庭裁判所への遺言書の検認手続きが必要となりますが、公正証書遺言ではその手続きが不要です。
よって公正証書遺言は、検認手続きを経ることなくそのまま相続登記の添付書類として使用することができます。
公正証書遺言の原本は公証役場に保管されているため、正本または謄本を相続登記の申請書に添付することになります。
②相続登記の手続きについても、遺言執行者を定めておければ、その者と不動産を承継する方のみで申請することができ、他の相続人の関与は必要ありません。
③戸籍関係についても、出生から取り寄せる必要はなく、亡くなられ方については最後の戸籍(除籍)謄本のみで足ります。
以上のように公正証書遺言を残しておくことで、遺言書に偽造・紛失及び相続人同士の紛争が起きるリスクも減り、また相続手続きについても必要書類の簡素化や検認手続きが要らないなどの手間を省くこともでき、当事務所では、遺言を作成される際には公正証書遺言をお勧めしております。
相続人なき財産、過去最高
本日(2023年1月23日)朝日新聞デジタルに以下のような記事が出てました。
「遺産の相続人がいないなどの理由で国庫に入る財産額が、2021年度は647億円と過去最高だったことがわかった。身寄りのない「おひとり様」の増加や不動産価格の上昇も背景に、行き場のない財産は10年前の倍近くに増えた。専門家は早めに遺言書をつくるよう勧めている。」
相続人がいないということは、法定相続人がいない状態や法定相続人全員が相続放棄をしたような状態をいいます。
このようなケースで更に遺言がない場合には、財産を相続する方が誰もいないことになりますので、財産は国庫に帰属されることとなります。
※国庫に帰属される手続きとは、利害関係者の申し立てにより、家庭裁判所に選任された「相続財産管理人」が選任され、未払いの税金や公共料金などを清算し、相続人が本当にいないかを確認します。一緒に暮らしたり身の回りの世話をしたりした「特別縁故者」がいれば家庭裁判所の判断などにもとづいて財産を分与し、残りは国庫に帰属するものです。
法定相続人がいないことがあらかじめ分かっている場合には、お世話になった方やどこかの団体に寄付するなど、
ご自身の財産の行き先について、遺言を作成しておくことをお勧めします。
子どもがいない夫婦の相続人とは?
子どものいない夫婦の相続人とは?
法定相続人とは民法で定められており、子のいない夫婦のうち夫が亡くなった場合、夫の相続人は次のとおりとなります。
- ①妻と夫の直系尊属(夫の両親など)
- ②妻と夫の兄弟姉妹(夫の直系尊属がいない場合)
子がいない夫婦が高齢になり、直系尊属(父母、祖父母等)が既に他界している場合は、夫の相続人は妻と(夫の)兄弟姉妹となります。
長年連れ添ってきたご夫婦で、配偶者が亡くなったときには、当然に財産全てをご自身が相続されると思われているケースもありますので、ご注意ください。
子どものいない夫婦に相続が発生すると
子がいない夫婦において、仮に夫が亡くなった場合、既に夫の両親が他界していて兄弟姉妹がいるときには、夫の財産は妻と(夫の)兄弟姉妹が相続します。
この場合、基本的には妻と(夫の)兄弟姉妹が遺産分割協議をし、誰がどれだけ相続するかを決定することになります。
妻として、夫と一緒に築いてきた財産の一部を(夫の)兄弟姉妹が相続することに納得いかない人もいるかもしれませんが、(夫の)兄弟姉妹にも相続権が認められています。
夫の兄弟姉妹といっても、長年疎遠であったり、連絡先も分からないこともあるでしょう。
そうした中で連絡を取り合って相続の話合いを進めていくことは大変です。
配偶者に相続させる遺言があると
夫が、残された妻に全て相続させる旨の遺言を残すことは勿論可能です。
この場合、夫の相続財産は全て妻が承継することになります。
兄弟姉妹には遺留分がありませんので、相続財産につき妻に全て相続させる旨の遺言があれば、妻が全て相続することができます。
ただし、今後の関係を踏まえて兄弟姉妹にもいくらか財産の残すような遺言を残しておくこともできますので、そのような時には内容もご検討ください。
この遺言については、夫が先に亡くなり妻が残されるケースで記載しておりますが、その逆の可能性(妻が亡くなり、夫と妻の兄弟姉妹が相続人)も勿論あり得ます。
こうした事態に備えて、ご夫婦共に同時に遺言を作成しておくことをお勧めします。
注意点としては、夫が全て妻に相続させる旨の遺言を残したときに、妻が夫より先に亡くなっている場合です。
この場合、その遺言の効力は生じず、夫の財産は(夫の)兄弟姉妹が相続することになります。
もし、夫が自分の兄弟姉妹に自分の財産を相続させたくないときは、全て妻に相続させるが、先に妻が亡くなっていた場合は●●に相続させるという遺言を残すこともできます。
誰がいつ亡くなるかは分かりませんので、このような形態の遺言を残すことも検討されるのも方法の一つです。
遺言作成でお困りのことがあれば、当事務所にご相談ください。
初回相談・費用見積は無料で承っております。
自筆証書遺言があるときの相続手続き
法定相続分と相続
亡くなれた方の相続財産については、民法で規定があり法定相続人がその権利義務を承継することとなります。
法定相続分や法定相続人の順位について民法で定められており、以下のようになります。
- 法定相続分
相続人が「どの割合」で相続分を持つのかは、以下のとおり法律で定められています。
第1順位相続人 |
|
第2順位相続人 |
|
第3順位相続人 |
配偶者は必ず相続人になり、相続人が配偶者しかいなければ、配偶者が全て相続します。また、相続人が第2順位や第3順位の相続人しかいなければ、その順位の方が相続します。同一順位に複数の相続人がいあれば、均等に相続分を分けることになります。例えば、相続人が配偶者、子2名の場合には、配偶者が2分の1、子2名が各々4分の1づつ相続することとなります。
- 法定相続人の順位
配偶者がいれば配偶者は必ず相続人となります。その他、配偶者とともに、子、両親、兄弟姉妹がその順位に応じて相続人となります。
第1順位相続人は、その時に存在していれば、必ず相続人となりますが、第2順位や第3順位の人は、自分より前の順位の相続人が全ていないときに初めて相続人となります。よって、被相続人に子がいれば、被相続人の両親や兄弟姉妹は相続人となりません。
通常の相続財産の分け方については、法定相続分を基に相続人同士で協議をして進めることが一般的です。
遺言があった場合の承継者の指定
しかしながら、亡くなられた方が遺言をのこしていたときはその遺言の内容が優先されるため、遺言の内容に従って相続財産が承継されます。
このような遺言があった際には、対象財産を相続すると指定された相続人へ相続手続きを進めていくこととなります。
自筆証書遺言のケース
遺言には主に自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類がありますが、自筆証書遺言は遺言者のみで作成できる為に、最も多く作成されているものです。
自筆証書遺言が見つかり、その内容により不動産を相続した相続人は、その自筆証書遺言を使って、自分名義へ相続登記をすることが可能ですが、以下のような注意点もあります。
自筆証書遺言の注意点
検認手続きが必要
自筆証書遺言は、そのままでは相続手続きや相続登記の添付書類として使用することができません。
自筆証書遺言を相続登記に使用するには、管轄の家庭裁判所へ遺言書の検認の申立てをして、自筆証書遺言に検認済証明書を付けてもらう必要があります。
検認手続きが完了しても、有効性は担保されない
家庭裁判所で遺言書の検認手続きが完了したとしても、その遺言が有効なものと判断されたわけではありません。
自筆証書遺言は遺言者のみで作成できる為に簡易に作成できますが、やはり成立要件があり、その要件を全て満たしていないと無効となってしまう可能性もあります。
亡くなられた方の自宅や貸金庫から遺言が見つかった際やその後の手続きについてお困りの方や不安な方がおられれば、当事務所に気軽にご相談ください。
初回相談・費用見積は無料で承っております。
« Older Entries