日本に在留する外国人の方は、在留資格を「永住者」に変更する永住許可申請をすることができます。永住権(永住ビザ)への在留資格の変更手続きは、通常の在留資格の変更手続きではなく、永住許可申請という別の手続きが必要です。永住許可申請は日本で入管法上もっとも安定した「永住者」の在留資格を取得するために特に慎重に審査されます。
ただし、明確な審査基準は存在せず、基本的には永住申請者の活動状況・在留状況・在留の必要性等を総合的にかつ公平に考慮して判断されます。
審査基準は次のような要件があります。
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Ⅰ、素行が善良であること(素行善良要件)
日常生活において法律を遵守し、住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること。これは刑事罰(懲役・禁錮、罰金)のみならず、交通違反は軽微なものを除いて飲酒運転、無免許運転、大幅なスピード違反等の重大な違反行為があったときには、永住許可申請の要件を満たさないので注意が必要です。
しかし、仮に過去に刑事罰を受けて前科があっても、永住許可が永遠にされないというわけではありません。罰金については、刑の執行が終わり、または執行の免除を受けた日から5年(懲役・禁錮については10年)経過した場合には、上記要件を満たすことができます。
Ⅱ、独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること(独立生計要件)
日常生活において公共の負担になっておらず、かつ、その者の職業又はその者が有する資産等から見て将来において安定した生活が見込まれること。具体的には以下のような要件が該当します。
- 生活保護を受けていないこと
- 仕事、収入、資産等から判断して、将来安定した生活を送ることができること
⇒一定の年収(一概には言えませんが、300万円が目安です)がないと審査が厳しくなります。また、被扶養者がいる場合はその扶養分の年収が必要となります。これは世帯単位で判断されます。
経営・管理ビザを持っている方が、永住権(永住ビザ)の申請をする場合には、会社の業績も判断されますので、赤字が続いているような場合には、注意が必要です。
日本人の配偶者、永住者の配偶者、特別永住者の配偶者はⅠ、Ⅱに適合することは必要とされていません。
Ⅲ、その者の永住が日本国の利益に合すると認められること(国益要件)
非常に抽象的な表現ですが、具体的には以下のような要件が当てはまります。
●原則として引き続き10年以上日本に住んでいること
ただし、10年日本に住んでいれば良いわけではなく、この期間の内、「就労資格」または「居住資格」のビザで引き続き5年以上日本に住んでいることが必要です。
よって、留学ビザで来日した後に、就労ビザに切り替えた方は10年日本に住んでいても、その内就労系ビザの期間が5年以上必要となります。
その他一時的にまた何度も母国に帰ったり、仕事で海外に長期滞在しているような場合にも「引き続き」の要件を満たしていないと判断されるときもあります。
この要件は、原則10年以上となっていますが、次のような場合には緩和されることになっています。
永住権(永住ビザ)の5つの特例
① 日本人と結婚している場合
配偶者が日本人もしくは永住者、特別永住者であった場合には、婚姻生活3年以上かつ、引き続き1年以上日本に在留していることが条件となります。よって実体を伴った夫婦として3年以上過ごしていて、その内1年以上日本に住んでいれば10年以上の在留の必要はなくなります。
また、日本人、永住者、特別永住者の子は1年以上日本に在留していれば要件を満たします。
② 「定住者」のビザ(在留資格)を持っている場合
日系人や難民、日本人の配偶者等と死別や離別をした外国人などを対象にした在留資格として、「定住者」という在留資格が存在します。この資格を5年以上継続し、日本に滞在している場合には10年以上の在留の必要はなくなります。
③ 難民の指定を受けた場合
難民の指定を受けた人は、認定を受けてから5年以上継続して日本に住んでいれば10年以上の在留の必要はなくなります。
④ 外交や社会、経済などの分野で日本への貢献があったと認められた場合
様々な分野で日本に貢献した人は、5年以上日本に住んでいることで永住権の在留期間の要件を満たします。
具体的には、日本政府から、政府や自治体から委員として任命を受け、3年以上公共の利益を目的とする活動を続けた人、地域活動の意地や発展に貢献した人や外交・経済産業・文化芸術・教育・研究・スポーツ分野などで日本に貢献した人も対象です。
申請の際にはいかに貢献したかの具体的な内容については書類を添付するなどにより、伝える必要があります。
⑤ 高度専門職に規定する場合
高度専門職省令に規定するポイント制で70点以上の点数を持っている方で3年以上継続して日本に住んでいれば永住ビザの在留期間の条件を満たすことになります。
また、高度専門職省令に規定するポイント制で80点以上の点数を持っている方で、1年以上継続して日本に住んでいれば、同様に条件を満たします。
その他にも、以下の条件等も満たす必要があります。
- 納税義務等を履行していて、法令を守っていること
税金、公的年金、社会保険料などの未納がないことが求められます。 - 著しく公益を害する行為をするおそれがないこと
- 罰金刑や懲役刑を受けていないこと
- 現在持っているビザの在留期間が3年以上であること
これらの要件を満たした上で、多くの必要書類を揃えて永住許可申請を行います。
注意する点が、永住許可申請中であっても、在留期間が延長されたりすることはありません。審査期間はおおむね4ヶ月とされていますが、それ以上の日数(6ヶ月~1年弱)がかかることもありますので、ビザ(在留資格)の有効期間が1年以上残っているなどのスケジュールに余裕を持った申請手続きをおすすめいたします。
永住ビザ許可要件一覧
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申請人 |
国益要件のうち日本在留期間の要件 |
その他許可要件 |
原則 |
一般の方 |
・引き続き10年以上日本に在留していること |
・素行善良要件 |
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留学生として入国し、卒業後に日本で就職している方 |
・引き続き10年以上日本に在留していること (ただし、この期間のうち、就労系ビザ(技能実習や特定技能1号は除く)又は身分系ビザ(永住者、日本人の配偶者等)に変更許可後引き続き5年以上の在留歴があること |
・素行善良要件 |
特例(緩和) |
日本人、永住者又は特別永住者の養子(特別養子除く) |
・引き続き10年以上日本に在留していること |
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日本人、永住者、特別永住者の配偶者 |
・婚姻生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上日本に在留していること |
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日本人、永住者、特別永住者の子又は特別養子 |
引き続き1年以上日本に在留していること |
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「定住者」のビザ(在留資格)をもっている方 |
引き続き3年以上日本に在留していること |
・素行善良要件 |
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難民の指定を受けた方 |
引き続き5年以上日本に在留していること |
・素行善良要件 |
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外交や社会、経済などの分野で日本への貢献があったと認められた方 |
引き続き5年以上日本に在留していること |
・素行善良要件 |
高度専門職省令に規定するポイント制で70点以上の点数をもっている方 |
引き続き3年以上日本に在留していること |
・素行善良要件 |
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高度専門職省令に規定するポイント制で80点以上の点数をもっている方 |
引き続き1年以上日本に在留していること |
・素行善良要件 |
永住ビザの申請には身元保証人が必要
帰化申請と違い、永住ビザを申請する際には、必ず身元保証人が必要となります。
身元保証人は友人・知人などにお願いして頂く必要がありますので、正しく内容・性質を理解した上で、説明しないと断られてしまうこともあります。そこで永住ビザ申請の身元保証人の内容、要件、責任について説明していきます。
① 身元保証の内容
身元保証人は身元保証書に署名・捺印をしなければなりませんが、身元保証書については以下の内容を保証する旨が記載さています。
- 滞在費
永住ビザの申請人が日本で滞在するために必要な経費全般 - 帰国旅費
永住ビザの申請人が、万一帰国しなければならないときの、帰国のための経費全般 - 法令の遵守
永住ビザの申請人が日本に滞在するにあたり、法律・命令などの社会的規範に違反しないこと
②身元保証人の要件
- 日本人または永住者の方
永住ビザの身元保証人には日本人または永住者に協力して頂く必要があります。期限がある在留資格の方が身元保証人では、永住ビザ取得後も身元保証人としての効力は継続するので、その要件は果たせないとされています。 - 安定的な収入があること
身元保証人は、日本で安定した収入があることを証明出来る書類が求められます。ただし、収入についての規定はなく、安定した仕事で定期的に収入があれば良いでしょう。
③身元保証人の責任
保証人といっても、借金の保証人と同じではありません。身元保証人は民事上の保証人と違い法的責任は負いません。よって、永住ビザの申請人が他人に損害を与えた場合や申請人は借金を背負って支払いがなかったときにも、身元保証人には請求することはできません。
あくまで身元保証は道義的責任であり、万一永住ビザの申請人は困ったときに手助けするという主旨のものです。特に法的な罰則はありません。
永住ビザ(永住権)申請の必要書類
① 記入が必要な書類
- ・永住許可申請書
- ・身元保証書
- ・申請理由書…永住を希望する理由、日本入国時からの現在までの状況など
② 役所関係の書類
- 住民税の課税証明書(直近5年分)
- 住民税の納税証明書(直近5年分)
- 申請人を含む家族(世帯)全員の住民票 ※マイナンバーの項目のみ記載省略したもの
- 配偶者の戸籍謄本 日本人との婚姻関係にある場合
③ 勤務先関係の書類
- 在籍証明書
④ 年金・医療保険料の納付状況を説明する資料
- 年金の納付状況の証明資料(直近2年分、ねんきん定期便またはねんきんネットの各月納付状況の印刷外面)
- 国民健康保険の納付済領収書(直近2年分)
- 同居家族全員分の健康保険証のコピー
⑤ 身元保証人に関する書類
- 身元保証人の住民票…保証人個人の記載のものでマイナンバーの項目のみ記載省略したもの
- 身元保証人の住民税の課税証明書(直近1年分)
- 身元保証人の在籍証明書
- 身元保証人の身分証明書のコポー…運転免許証、在留カードなど
⑥ 状況によって任意で提出する書類
- 預貯金関係を証明するもの…口座通帳のコピー、残高証明書など
- 不動産の登記事項証明書・・・持家や所有不動産がある場合
- 株式の保有証明・・・株式を保有している場合
- 日本への貢献を証明する書類・・・表彰状、感謝状など
- 有資格証明書・・・大学卒業証明書、日本語検定、国家資格、民間資格など
⑦ その他必要な書類
- パスポート・・・申請時に窓口に提示
- 在留カード・・・申請時に窓口に提示
- 申請用写真・・・永住許可申請書に貼付
※現在の在留資格(ビザ)の状況などによって、必要書類が異なってくる場合があります。